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【劇場アニメレビュー】新生『パトレイバー』で原点回帰! 懐かしくて新しい『機動警察パトレイバーREBOOT』が期間限定で登場!!

おたぽる 10/18(火) 20:00配信

 庵野秀明が率いるアニメーション制作会社スタジオカラーと、エンタメ・コンテンツ会社ドワンゴの共同企画で2014年より始まった「日本アニメ(ーター)見本市」は、さまざまなアニメーション・クリエイターを招いて短編作品を作らせてネット配信していくという企画。15年の夏にはファーストシーズン12作品とサードシーズン5作品を、映画館で2週間限定のイベント上映もされた。

 そして今年も第2弾『ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市』と題して、セカンドシーズンから8作品、サードシーズンから4作品プラスEXTRAを、10月15日より東京・新宿バルト9と大阪・梅田ブルグ7にて1週間限定上映されている。

 このプラスEXTRAというのが、今回の目玉でもある『機動警察パトレイバーREBOOT』。

 ご存じ、近未来の東京を舞台に、ロボット技術の発達に伴い急増してきたレイバー(汎用多足歩行型作業機械)犯罪に対処すべく警視庁警備部内に設けられた特科車両二課中隊、通称“特車二課”の活躍を描いたもので、88年よりOVAやマンガ、TVシリーズ、長編映画などが制作され、アニメ・ファンの熱い支持を得てきている。

 14~15年にかけて実写映画(全12話+総集編)シリーズも制作され、話題を集めたばかりだが、劇場アニメーションとなると長編映画第3作『WXIII 機動警察パトレイバー』(02/同時上映は短編『ミニパト』)以来14年ぶりであり、その意味でもファン待望といえるだろう。

 結論から先に言わせていただくと、この『機動警察パトレイバーREBOOT』は、まさに「これこそ『機動警察パトレイバー』だ!」と快哉を挙げたくなるほどの快作であった。

 実は正直、鑑賞前にランニングタイムが8分弱と聞かされ、そんなに短いものを見せられてもなあ……といった気分もあったのだが、いざ見始めると実に濃密な8分間を体感でき、あたかも30分もののテレビアニメ1本を見ているかのようなボリューム感すらある。

 そして何よりもうれしかったのが、本作がシリーズ初期のテイストへ回帰していることである。

 思えばこのシリーズ、新作が作られるごとに押井守監督の色が強まっていき、特に劇場用映画の2本は彼独自の社会に対する思想色が露わとなり、またそれは時代のニーズに応じたものとしてこちらも違和感なく受け入れてはいたものの、今振り返ると、シリーズ初期の大らかでコミカルな色合いが失われていたことに気づかされる。

 そもそもパトレイバーの原作集団ヘッドギアは出渕裕(今回は監修&メカニカルデザインを担当)、伊藤和典(今回は共同脚本)、押井守、高田明美、ゆうきまさみ(今回はキャラクター原案)で成り立っているわけで、その意味でも今作は押井色よりもヘッドギアそのものの色合いが強く出たものとなっているのだ。

 そんな今回のREBOOTを演出したのが吉浦康裕監督。これまで『ペイルコクーン』(05)や『劇場版イヴの時間』(10)、『アルモニ』(14)と、クールな世界観の中、ふと体温が上がるかのような好もしい作品群や、天地逆転世界を描いたファンタジー『サカサマのパテマ』(13)のような快作で知られる若手の才人ではあるが、彼とパトレイバーの接点を見いだしづらかったのも正直なところではあった。

 しかし、これらの作品群の後、彼が『日本アニメ(ーター)見本市』で手がけた怪獣映画『POWER PLANT No.33』(15)と数々の映画やアニメのパロディ&オマージュで繰り広げられる『ヒストリー機関』(15)を見ると、そのタッチが一気に変貌したことに驚かされる。

 吉浦監督いわく、従来の自分の色は『アルモニ』で一度封印し、以降は違う資質を見出していこうと決意した折に『見本市』の話が来て、新たな自分を開拓できたのだそうだ。

 また吉浦監督は小学校の時から『パトレイバー』TVシリーズに親しんでいて、今回もプロデューサーからパトレイバーの新作を企画していると聞かされたとき、すかさず監督に立候補したのだとか。

 そんな彼だから、今回は後年のシリーズの色合いを良い意味で払拭させ、原点回帰を図ることに見事成功している。

 キャラクターも一新されてはいるが、これは『日本アニメ(ーター)見本市』作品の声優は山寺宏一と林原めぐみのみという規則があるためで、もはや神としか思えないほど変幻自在に声を操る両者のテクニックには脱帽するばかり。

 キャラそのものも実に勢いよく描出されており、また狭苦しい下町でのレイバー同士の諍いもパトレイバー・ワールドならではで、また、その光景を見守る群衆たちが特車二課を応援しているのではなく、むしろ「税金泥棒!」などとヤジを飛ばしているのが妙味。

 これならREBOOTとしての新シリーズ制作を、TVアニメなり映画なり大いに期待したくなってくるのが人情というものだが、その懸け橋としても本作には存在意義がある。

 Blu-ray&DVDのリリースも既に決定しているが、これはぜひとも銀幕の大画面で堪能していただきたい。

 その伝で申すと、今回の『ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市』、たった1週間しか上映しないというのはちともったいないのではないか?(しかも料金2000円。面白かったので十分モトは取れた気になってはいるが)せめて2週間くらいはあってもいいように思うのだが……。

 こういった短編連作を定期的に上映してくれるような映画館があれば、このジャンルもさらに開拓していけるのではないかと思えてならない。短編アニメを見るのにスマホやPCはほどよいものにはあるはあるが、やはり面白い作品は大画面で見たいと願う大艦巨砲主義者(!?)もまだまだいっぱいいるはずなのだ。
(文・増當竜也)

最終更新:10/18(火) 20:00

おたぽる

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。