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「アメトーーク!」日テレ独走を止められるか

東洋経済オンライン 10/18(火) 6:00配信

 テレビ業界では、日曜の夜は日本テレビの天下だと言われて久しい。19~22時のゴールデンタイムでは「ザ! 鉄腕! DASH!!」「世界の果てまでイッテQ!」「行列のできる法律相談所」という高視聴率バラエティ番組が並んでおり、ずっと他局を寄せ付けていなかった。他局があの手この手で挑んでも、分厚い壁に弾き飛ばされてしまう。現状で唯一ここに対抗できているのはNHKの大河ドラマ「真田丸」ぐらいのものだ。

■「アメトーーク!」が日曜ゴールデンへ進出

 だが、秋の改編でこの独走態勢に異変が起こるかもしれない。台風の目になる可能性があるのは、テレビ朝日が深夜に放送している人気番組「アメトーーク!」の日曜ゴールデン進出だ。

 「日曜もアメトーーク!」という深夜とは別の番組として10月16日から放送が始まった。初回放送の2時間特番では「体当たりシミュレーション」と「ついつい食べ過ぎちゃう芸人」という2つの企画がメイン。過去にも人気を博してきた名物企画で満を持してスタートを切ることになった。DVDの売り上げも好調で長年にわたって根強い支持を受けてきた「アメトーーク!」がゴールデンに上がることで、日テレの支配体制に風穴を開けることができるかもしれない。

 「アメトーーク!」は、雨上がり決死隊がMCを務めるトークバラエティ番組。もともとは「アメトーク!」という番組名で2003年に始まった。開始当初は俳優や芸人などさまざまなジャンルのゲストを招いて話を聞いていくシンプルなつくりのトーク番組だった。

番組のテイストが変わったきっかけとは?

 だが、ある回をきっかけに番組のテイストが変わった。それは「メガネ芸人」というテーマでメガネを掛けた芸人が数人集められたときのこと。ひな壇に並ぶ芸人たちの間でメガネを掛けている人にしか分からない話で共感が生まれ、「メガネを外すのはブラを外すのと同じ」といった話題に。そして、芸人同士の悪ノリに近いやりとりがどんどん加速していった。ここで番組スタッフは手応えを感じ、これ以降、「○○芸人」という特定の共通項のある芸人を集めてトークをする、という今ではすっかりお馴染みのシステムが確立されていった。

 ちなみに、ひな壇に並ぶ芸人たちのことを「ひな壇芸人」と呼ぶことがあるが、その呼び方自体が世の中に広まったきっかけも、「アメトーーク!」で「ひな壇芸人」という企画が行われたことである。

 「家電芸人」という企画はバラエティの枠を超えて大きな話題になった。そこに出演した芸人が家電関係の仕事を増やしたり、番組で取り上げられた家電製品が実際に売れ行きを伸ばしたりする、という現象まで見受けられるようになった。「ガンダム芸人」「エヴァンゲリオン芸人」など、アニメや漫画を愛する芸人たちがその魅力を熱く語る姿も印象的だった。

 また、「人見知り芸人」「気にしすぎ芸人」など、人間のネガティブな部分に光を当てて、それを明るく笑いに変えるような企画もこの番組に独特のものだった。中でも、「中学の時イケてないグループに属していた芸人」は、放送当時から大反響を呼び、シリーズ化されて何度も放送された。そして、この企画は放送批評懇談会主催の「ギャラクシー賞」月間賞にも選ばれた。

 そんな「アメトーーク!」は、深夜のレギュラー番組として安定した人気を誇っており、ゴールデンで何度も特番が組まれていたが、ゴールデンに上がってレギュラー化されることはなかった。そこにはおそらく、加地倫三ゼネラルプロデューサー(GP)の冷静な判断があったのだと思われる。ゴールデンに不向きな番組を無理矢理に上げて、すぐに打ち切りを迎えてしまう番組は決して珍しくはないからだ。「アメトーーク!」をその憂き目に遭わせるわけにはいかないと思っていたのではないだろうか。

■ゴールデン進出が実現したのはなぜなのか

 ではなぜ、今回のゴールデン進出が実現したのか。それは、深夜のレギュラーを残したままでゴールデンでも番組を立ち上げる、という異例の形だったからだ。深夜番組が伝統ある老舗として続けられるのであれば、試しにゴールデンに支店を出してみてもいい、ということなのだろう。「日曜もアメトーーク!」という番組名から伝わってくるのは、あくまでもメインは深夜番組の方だという制作者の強いメッセージだ。実際、加地GPもインタビューの中でそう語っている。

 「アメトーーク!」という番組の特徴は、どんなに人気が出てきても決して守りには入らない、ということだ。油揚げが大好きな芸人たちがそのおいしさを語るだけの「あぶら揚げ芸人」、ケンドーコバヤシが中心となってプロレスラー越中詩郎のことを話すだけの「越中詩郎芸人」など、どう見ても一般ウケしそうにないネタも過去には平気で取り上げている。

 そこで芸人たちが知恵を絞り出してゼロから笑いを生み出していくところが、コアなお笑い好きの心をつかんだ。また、そうやって攻めの姿勢を貫き、面白さの可能性を広げていったことが現在につながっている。ゴールデンに上がっても攻める気持ちを失わず、新しいチャレンジを続けてくれることは十分期待できる。

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最終更新:10/18(火) 11:15

東洋経済オンライン

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