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習近平が危ない! 「言論統制」がもたらすワナ

東洋経済オンライン 10/18(火) 6:00配信

 習近平・中国国家主席は「腐敗取り締まり」と「言論統制」の2本の鞭を駆使して、国や地方の指導者と幹部に活を入れ、また、共産党の一党独裁体制に不都合な言説を排除している。巨大な国家は、既存の組織・機構や既定の方法で動かないから鞭が必要なのだろうが、習近平の鞭は歴代の政権にくらべ、はるかに強力だ。

 2012年11月の第18回共産党大会で総書記になった習近平は、2013年3月に中国の国家主席に就任し名実ともに中国のナンバーワンになると、優先課題として言論の統制強化に取り掛かった。当然、胡錦濤前政権から続く、報道の自由化傾向を見守っていたと思う。特に2011年7月23日、浙江省温州市付近で起こった高速鉄道事故では多数の死傷者が出て、民衆のすさまじい怒りを買った。メディアは大々的に報道し、『人民日報』など公式新聞の記者も民衆の目線に立って、独自の取材活動をした。政府の高速鉄道プロジェクトを真っ向から批判した新聞もあった。このように自由な報道は、事件から約1週間後、中央の指示で規制されるまで続いた。

■記者免許の更新試験まで実施

 しかし、習近平は報道の自由化傾向に危機感を抱き、対策を強化しなければならないと考えたのだろう。まずメディアに対して革命思想の徹底を図る。具体的には、全国の新聞やテレビ、通信社、雑誌などの記者25万人にマルクス主義を学ぶ研修を義務付け、2014年早々、統一の記者免許更新試験を実施した。免許更新試験に合格しなければ、記者活動はできなくなるので、事実上強制的な措置であった。

 後には「メディアは党の一族だ」と言い始めた。メディアが自由化傾向を強めると党の指導から離れていく。そのようなことはあってはならないと考え、中国では政府もメディアも共産党の指導の下で協力していくべきことを強調したのだ。

米グーグルに圧力、サイトの閉鎖も

 インターネットについても、前政権時代からの対策では不十分と考えた習近平は、取り締まりを強化。そこで流される言説を政府のふるいにかけ、無責任あるいは事実でないと当局が判断する投稿を許さず、それでも問題のあるサイトは強制的に閉鎖した。政府の方針に背いたとして逮捕された者の数は1年間で数十人に上ったという見方もある。

 もちろん、インターネットを完全に統制することは困難だ。取り締まりを強化すれば、それなりに効果は上がるが、取り締まりをかいくぐり、別の場所や別の方法で同じことを繰り返す者が現れる。モグラたたきのようなものだが、政府はそれでも手を緩めず、その大元から規制することを試み、米グーグルなど外国の検索エンジンに対しても、半ば強制的に統制強化に協力することを求めた。サイトの閉鎖は今でも日常的に行われている。

 中央の宣伝部を頂点とする従来からの言論統制のあり方にも不満だったらしい。2014年2月、「中央インターネット安全・情報化指導小組(中央網絡安全・信息化領導小組)」を成立させ、自らその長となった。「インターネット安全」といいながら、インターネットの対策全般を監督する新機構である。宣伝部のさらに上に位置付けられている。

 ちなみに、習近平は「○○小組」なる組織を多数成立させ、すべて自らが長(主任)となっている。既存の政府機構が満足に動かないから、強力な新機構を作るのだ。2015年7月には「国家安全法」を成立。これは、スパイ行為などを始め広範な反中国的言動を取り締まるもので、インターネットについても一条(第25条)設けている。

■香港のメディアでは編集幹部が解雇

 さらには香港のメディアにも、統制強化を及ぼした。2015年10月、香港の「銅鑼灣書店」の店長や店員ら5人が習近平に批判的な書籍を販売したという理由で拉致され、数カ月間、中国内にとどめ置かれた。

 やはり香港の『明報』は、中国情勢に関する報道でトップクラスだが、「パナマ文書」の特集を組んだ編集幹部の姜国元が2016年4月、突然解雇された。パナマ文書は習近平の親族が租税回避にかかわっていたことを暴露したからであり、圧力がかかって明報社としても解雇せざるを得なくなったのだと言われている。

 このように言論統制の強化が進む中で、いくつかの新聞・雑誌は自由な報道を重視する姿勢を見せたが、結局すべてつぶされた。

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最終更新:10/18(火) 6:00

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