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マッターホルンは今より4m高かった! 121年前のスイス・ガイドブックを発掘

CREA WEB 10/18(火) 12:01配信

1291年に始まるスイスの歴史

 スイス在住のコーディネーター、ハイキング・スキーガイドの西村志津と申します。これからスイスアルプスの山の絶景や街の魅力をお伝えしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、スイスという国について……。

 スイスという国の歴史は、1291年8月1日にウーリ、シュヴィーツ、ウンターヴァルデンの3州が誓約同盟を結んだことから始まります。1815年のウィーン会議で永世中立国となり、第一次世界大戦では、積極的には戦争に参加しませんでした。

 国土の大部分が山岳地帯ですが、化学・製薬、機械、金融サービスの分野が発達し、世界市場における地位を確立していきます。公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つ。首都は綺麗な旧市街が世界遺産に登録されているベルンです。

121年前のガイドブックに出合う

 旅をするにあたり、重要なのは情報収集。その方法も変化を遂げてきました。ガイドブックや雑誌、インターネット、電子書籍などなど……。先日、スイス人のパートナーの実家から1895年に出版されたスイスのガイドブックを見つけました。

 なんと出版されたのは121年前、その時に日本は明治28年。ドイツで印刷されて当時のお金で6マルク。高級本だったに違いありません。今でもそんな本が普通の家庭で保管されていたことに驚きました。古本の香りが歴史を感じさせます。フランスのシャモニーやイタリアのヴァルテッリーナもカバーされています。

 マッターホルンはなんと4482メートル。現在は4478メートルですから、今より高かったのです! フィスプからツェルマットに向かう途中、崖の上のエムドという村のニワトリさんは、冬にアイゼンを履いている、と書かれており、そのユーモアに微笑んでしまいました。

ヨーロッパ最古の登山鉄道の今昔

 グラウビュンデン州のレーティッシュ鉄道の地図はカラーで可愛らしい絵が描かれています。アイガー、メンヒ、ユングフラウの三山の景色が壮大なグリンデルワルト村。フィルストエリアに位置するファウルホルン山頂から見たパノラマの地図には、しっかりと山の名前と標高が書かれており、生真面目なスイス人の気質を感じます。

 ヨーロッパ最古の登山鉄道は、フィッツナウとリギ・クルムを結ぶ、1871年開通のリギ登山鉄道。レールの歯車と車両の下の歯車を噛み合わせて急勾配を上るラックレールを使用しています。1873年には日本の岩倉使節団が訪れているそうです。

 アルト・ゴルダウとリギ・クルムを結ぶ登山鉄道の開通は1875年。ヨーロッパ最古の登山鉄道という由来からなのでしょうか、湖が綺麗なルツェルンの街が起点になるので、街の地図はここだけカラーでした。大きな観光地として栄えていたのが想像できます。

 締めくくりは、スイスチョコレートの広告。1875年にチョコレートとミルクの調合に世界で初めて成功したのはスイス。ちなみに1年間にスイス人が食べるチョコレートの量はなんと11キロ! (日本は2キロだそうですが、本当に2キロも食べているでしょうか……)。

 歴史や趣を感じる1冊。当時の旅の最大限の情報が詰まっている、とても貴重な本に出合いました。少しずつ読み解いてタイムスリップを楽しみつつ、当時の人々が何を想い旅に出かけたのか、思いを馳せてみたいと思います。

西村志津(にしむらしづ)
山に魅せられ、日本山岳ガイド協会認定の登山ガイドとなる。2012年の結婚を機にスイスへ移住。コーディネーターやハイキング・スキーガイドとしてスイスと日本の架け橋になる活動に努める。一方で心と身体の健康を伝えるべくヨガインストラクターとしての一面も持つ。現在、子育てにも奮闘中。共訳書に『マッターホルン最前線』(東京新聞出版局)。

西村志津

最終更新:10/18(火) 12:01

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