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シベリヤで断絶と沈黙の中を生きた詩人・石原吉郎の信仰

Book Bang 10/19(水) 8:00配信

 8年間のシベリヤ抑留体験をもち、詩人でありエッセイストの石原吉郎。代表作であるエッセイ集『望郷と海』は誰もが知るところだが、石原が神学校進学を決意するほどのキリスト者だったことはあまり知られていない。
 編者の柴崎聰が、90ある石原の散文から33作品を選び、「シベリヤフランクルに導かれて」「詩の発想」「聖書と信仰」「ユーモア」の四つに区分し編纂した。4章をとおして石原の一貫した思想が見えてくる。
 過酷な体験は、本当の意味で解放されて後の「追体験」でしか体験され得ぬという告白。人間であることを断念させられた者は、自己確認の手段としての言葉を失うという告白。シベリヤで学んだことは、信仰とは危機に即応するかたちで人間を救ものではないという告白。
 「詩がある」と口語訳聖書を好んだ石原は、新約聖書の「ヨハネの黙示録」8章1節「第七の封印を解き給ひたれば、凡そ半時のあひだ天静かなり」を例に挙げ、わたしたちは「待つ」ものの出現がすべてだと思いがちだが、待つことがそのまま生きることではないかと問う。「信仰とは、決して希望に満ちあふれた、一途な、生の展開ではない」
 シベリヤで断絶と沈黙の中を生きた石原の忍耐と同義にも思える信仰の姿は、読む者の目を開かせる。

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最終更新:10/19(水) 8:00

Book Bang

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