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スティーヴィー・ワンダー、チャカ・カーン、プリンスの追悼コンサートで演奏

ローリングストーン日本版 10/19(水) 15:00配信

5時間にわたるオールスター・コンサートには、他にもジェシー・J、トリー・ケリー、ビラルらが出演。

【写真あり】スティーヴィー・ワンダー、チャカ・カーン、プリンスの追悼コンサートで演奏

10月13日夜、ミネソタ州セントポールのエクセル・エナジー・センターで行われた、スターたちによる約5時間に及ぶプリンスの追悼コンサートでは、卓越した演奏(スティーヴィー・ワンダーによる、ダニー・ハサウェイの『いつか自由に』のキーボードのソロ演奏)から、困惑してしまうパフォーマンス(プリンスの元妻、マイテ・ガルシアの剣を振り回しながらのベリーダンス)まで、さまざまな趣向が披露された。だが、このイベントで最も驚くべきなのは、この追悼コンサートが遂に実現したことだ。

プリンスの残された兄弟たちは、この7月、ミネアポリスのミネソタ・バイキングスの最新スタジアムで大きな追悼式を行うと、出演者は明らかにしないまま、その日付を発表した。しかし、スーパースターたちがなかなか出演をコミットしなかったため、この追悼コンサートのキャンセルの噂が浮上し、川向うの会場に変更して規模を縮小する。さらに、この一週間でジョン・メイヤー、クリスティーナ・アギレラ、アニタ・ベイカーなどの大物が出演を取りやめた。

それでも、コンサートは、セントポールのR&Bバンド、ミント・コンディションが『ビートに抱かれて』を含む3曲のメドレーを演奏して、十分キビキビと始まった。おそらくさらにキビキビしすぎたのが、モリス・デイ&ザ・タイムだ。眩いほどのキャナリー・イエローのスーツに身を包んで『ジャングル・ラヴ』のクラシックなダンスを元気に披露していたモリス・デイとザ・タイムにとっては、確実に2曲以上は演奏できる時間が与えられていたのに、聴衆が「ウー・ウィー・ウーウィー」といつもの掛け声をかけるひまもなく、慌ててステージを降りていった。

この夜の出演者の大半は、プリンスと仕事を共にしたシンガーだが、シェルビー・J、リヴ・ウォーフィールド、マーヴァ・キング、キップ・ブラックシャイアー、エリサ・フィオリーロ・ディーズ、ジュディス・ヒルなど、あまり知られていない顔ぶれが巧みにヒット曲やマニア向けの曲を披露した。プリンスの子供時代の友人で、初期のバンド仲間であるアンドレ・シモンは、カリスマっぽくこのセットでのトリを務め、誇らしげに陶酔しながらの『アップタウン』、サイケな囁き声による『ドロシー・パーカーのバラッド』を含む5曲でリードを取った。

だが、多くのプリンスの"系列下"ではないゲストは、印象が薄かった。1から"ヴァニティ6"の段階で評価をつけるなら、元プッシーキャット・ドールのニコール・シャージンガーによる『ナスティ・ガール』はせいぜい3.5点だ。トリー・ケリーは『レッツ・ゴー・クレイジー』を真面目に歌い、テレビの歌合戦モノを見ているお茶の間のウケを狙ったような、感情出しすぎの表情で歌う『ダイアモンズ・アンド・パールズ』をこれでもかと見せつけていた。ジェシー・Jとブラックシャイアーがデュエットした『愛の哀しみ』は、歌いすぎて犯罪的なほどだ。

他はマシだった。ビラルの『ビューティフル・ワン』は、彼のBET賞でのパフォーマンスと同じもので、プリンスの追悼に相応しい見事なものだった。彼の声は、彼が身体を地面に沈めると天井まで駆け上がり、『ドゥー・ミー・ベイビー』ではルーク・ジェームスの強烈にセクシーなファルセットが会場に広がった。

プリンスのバック・バンド、ニュー・パワー・ジェネレーションには、2つの異なる編成があり、共にキーボード奏者のモーリス・ヘイズが率いて、フル編成のホーンセクションがバックアップする、ハウス・バンドとして演奏していた。第1セットでの後期バージョンの編成の演奏は、プリンスの腹心カーク・ジョンソンに衰えが見られ、そのタイムキーピングが足を引っ張った。だが、90年代初期のNPGのメンバーに代わると、ドラマーのマイケル・ブランドとベースのソニー・トンプソンがリアルなファンクのグルーヴを築いていた。

5時間のショーといっても、60分ほど短くなりそうな気配もあったが、ペース配分がおかしかった。ポルトガルのファドのスター、アナ・モウラの気だるい『リトル・レッド・コルヴェット』は、ゆっくりすぎた。ショーの終演時刻が、予定の午後11時を過ぎて延長されると、昔風のMCでダグ・E・フレッシュが彼のオールディーズ『ラ・ディ・ダ・ディ』を演奏し始めたが、ミュージシャンたちが次の準備をできるようにするために時間を引き伸ばす意味があった。

だがレジェンド達はすぐに登場した。チャカ・カーンはピンクの扇子を見せびらかしながら、1998年にプリンスが彼女のためにプロデュースした『ベッチャ』に導かれて登場し、彼女のクラシック『スイート・シング』に移る。そしてスティーヴィー・ワンダーが合流し、『フィール・フォー・ユー』のハーモニカのソロを奏でた後、『1999』をデュエットで歌い、後のクライマックスへ向けての荒々しいスタートを切った。

ショーの終盤近くでワンダーが舞台にまた戻ってくると、彼はトリー・ケリーが『テイク・ミー・ウィズ・ユー』と『ラズベリー・ベレー』を一緒に歌うことを優しく許した。そして、ワンダーのプリンスについてのコメントは、彼が喋り、歌い、演奏するのと同様に、純粋で心のこもったものだった。「彼には、この世界をより住みやすくするための計画がたくさんあった」と、ワンダーとプリンスがよく一緒に演奏した、ハサウェイの歌を紹介する前にワンダーは聴衆に語っている。その後すぐ、彼は続けて『迷信』をインストゥルメンタルのジャムで演奏し、ワンダーがステージを去るまでバンドが演奏を続けた。

ワンダーは、決して避けることのできないフィナーレの『パープル・レイン』で、バンドがプリンス自身のヴォーカル・トラックに合わせて演奏する中、ステージに戻ってきた。ショーのエンディングとしては、なんとも不気味で、率直に言って不満なものだった。特に、十分に歌うことのできる希少なシンガーの1人が、ステージ上で涙を拭いているだけなのだ。だが、この瞬間と、この夜全般の奇妙さは、どこか納得できるものがあった。プリンスが逝ってしまってもはや6ヶ月近くが経つが、我々はまだどうすれば彼を適切に弔えるのかを探しているのだ。

曲目一覧

ミント・コンディション
『アメリカ』
『D.M.S.R.』
『ビートに抱かれて

モリス・デイ&ザ・タイム
『ザ・バード』
『ジャングル・ラヴ』

ボビー・Z、追悼の言葉spoken tribute
『アップタウン』(アンドレ・シモン)
『エロティック・シティ』(シェルビー・J)
『ホット・シング』(リヴ・ワーフィールド)
『キス』(マーヴァ・キング)
『アナザー・ラヴァー』(キップ・ブラックシャイアー)
『フォー・ユー』(タイカ・ネルソン)

ニコール・シャージンガー
『ナスティ・ガール』
『ベイビー・アイム・ア・スター』

ルーク・ジェームス
『ドゥー・ミー・ベイビー』
『ザ・モスト・ビューティフル・ガール・イン・ザ・ワールド』

ジュディス・ヒル
『ザ・クロス』
『ハウ・カム・ユー・ドント・コール・ミー・エニモア』
『ザ・ラダー』(アンドレ・シモン)
『クリーム』(エリサ・フィオリーロ・ディーズ)
『ドロシー・パーカーのバラッド』(アンドレ・シモン)

ダグ・E・フレッシュ
『ポップ・ライフ』(アンドレ・シモンと共演)
『ハウスクウェイク』

アナ・モウラ
『Walk in Sand』
『リトル・レッド・コルヴェット』

チャカ・カーン
『Betcha』
『スウィート・シング』
『フィール・フォー・ユー』(スティーヴィー・ワンダーと共演)
『1999』(スティーヴィー・ワンダーと共演)

サードアイガール
『プレッツエルボディロジック』(シェルビー・Jと共演)
『プレクトラムエレクトラム』
『ワウ』(リヴ・ウォーフィールドと共演)

ビラル
『ビューティフル・ワン』
『イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド』
『ミュージコロジー』(シェルビー・J)

マイテ・ガルシア、ダンス・パフォーマンス
『コンピューター・ブルー』(アンドレ・シモン)
『ダイ・フォー・ユー』(マーヴァ・キング)
『SEXY MF』(トニー・モズリー)
『ゲット・オフ』(ダグ・E・フレッシュ)
『スノウ・イン・エイプリル』(エリサ・フィオリーロ・ディーズ)
『ガールズ&ボーイズ』(マーヴァ・キング)
『シーズ・オールウェイズ・イン・マイ・ヘア』(キップ・ブラックシャイアー)
『戦慄の貴公子』(アンドレ・シモン)
『ラ・ディ・ダ・ディ』(ダグ・E・フレッシュ)

トリー・ケリー
『レッツ・ゴー・クレイジー』
『ダイアモンズ・アンド・パールズ』
『テイク・ミー・ウィズ・ユー』(スティーヴィー・ワンダーと共演)
『ラズベリー・ベレー』(スティーヴィー・ワンダーと共演)

ジェシー・J
『ウォナ・ビー・ユア・ラヴァー』
『愛の哀しみ』(キップ・ブラックシャイアーと共演)

スティーヴィー・ワンダー
『いつか自由に』
『迷信』

インストルメンタル・ジャム
『パープル・レイン』

Translation by Kise imai

KEITH HARRIS

最終更新:10/19(水) 15:00

ローリングストーン日本版

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