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脳に重い障がいを持つわが子と歩んだ2年3カ月

日経DUAL 10/19(水) 11:55配信

 「障がいを持った子どものことを受け止め、共に生きていこうと思うことは、少なくとも未熟な私には非常につらく、全く別世界に一人取り残されたような、苦しい道のりでした」
 佐々百合子さんの長男、尚武くんは、出生前に胎盤が子宮から剥がれてしまう「常位胎盤早期剥離(はくり)」のために低酸素状態となり、脳に重い障がいを負って生まれてきます。思うように体を動かせず、けいれん発作を起こすなどの症状も現れ、24時間つきっきりの介護が必要でした。そんな尚くんが2年3カ月の短い生涯を閉じるまでの間、佐々さんは心に去来した様々な思いを正直に書き留め、著書『あなたは、わが子の死を願ったことがありますか? 2年3カ月を駆け抜けた重い障がいをもつ子との日々』(現代書館)にまとめました。
 読んでいると、ウソのない率直な思いと、すべてを隠さずに記していく強さに圧倒されますが、佐々さん本人が話す口調はあくまで穏やかで柔らかく、尚くんの写真やビデオを見せてくれる姿は、ごく普通の2歳児の母です。尚くんと過ごした2年3カ月について、尚くんがいなくなってから考え、行動していることについて、書籍からの一節と共に話を聞きました。


■「あと1時間早く病院に行っていれば…」と今も考えることがある


 “私に起こった常位胎盤早期剥離というのは全妊娠の0.44~1.33%程度に発症すると言われているものだった。胎盤の剥がれる面積が小さかったり、進行がゆっくりであったりすれば母児とも無事に助かる場合もあるが、病院に行った際にすでに胎児が弱りきっていると、尚くんのように緊急帝王切開で赤ちゃんを娩出して新生児科医に蘇生処置を実施してもらっても脳性麻痺などの障がいが残る場合がある。”(『あなたは、わが子の死を願ったことがありますか?』13ページより)


日経DUAL編集部 出産というと、もっぱら痛みのことばかり気になりますが、実はやはり命の危険を伴うものなのだと、この本を読んで改めて思いました。

佐々百合子さん(以下、敬称略) そうですね。1人目の妊娠時って何も分からないから、ちょっとでも異変があるとすぐに病院に行きますよね。それが2人目は「これくらいの痛みなら大丈夫」と思ってしまったり、1人目のときにびっくりして病院に行き「まだだから」と家に帰された経験があったり、迷惑をかけたら悪いなと思ったりして、ついギリギリまで待ってしまうことがあるかもしれません。でも出産に関しては、とにかくちょっとでも気になったらすぐに病院に行くほうがいいと身にしみて感じています。

 私も、「もし病院に行くのが1時間早かったらどうだったんだろう」って今でも思います。最初にちょっと痛みを感じたときに「陣痛かもしれない」と病院に行っていたら、1時間以上違ったんです。あれが1人目の妊娠だったら、絶対に行っていただろうなとも思います。

 なんであのとき病院に行かなかったんだろう、もし病院に行ったのが夜中じゃなければ、先生の到着がもう少し早ければ、あるいは前日に帝王切開していたら……そんなふうに、今でも時々考えるんです。

 でも、「そういうどうにもならないことって世の中にあって、いつまでも悔やんでいても仕方ないから、どうしたら前向きになれるのかな」とか「どうしたら大変なこの運命を引き受けられるのかな」とか、やっとそういうふうに考えられるようになりました。

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最終更新:10/20(木) 15:00

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