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電通の「過労自殺」議論で、抜け落ちていること

nikkei BPnet 10/19(水) 9:47配信

違法な長時間労働にだけ目を奪われがち

 報道によると、大手広告会社の電通に勤務していた20代の女性が、長時間労働などにより、昨年11月にうつ病となり、12月に「過労自殺」をしました。今年の9月に、労災認定がされました。うつ病発症前(昨年10月9日~11月7日)の1か月の残業時間(時間外労働)は、約105時間と認定されたようです。

 10月14日には、厚生労働省東京労働局の職員らが、違法な長時間労働が常態化していた疑いがあるとみて、電通の本社を立ち入り調査しました。その後、地方支社や主要子会社もまた、その対象となっています。

 今回、あらためて「過労死」や「過労自殺」(過労自死)について考えてみます。

 月の残業がピークで100時間を超えていたとされる労働時間については、有識者が新聞やテレビ、ネット上でコメントを寄せています。現在、政府が「働き方改革」などで、長時間労働の是正について議論をしていることにともない、多数の識者が労働時間の規制について発言も繰り返ししています。

 したがって、この記事では、長時間労働についてふれることは避けます。むしろ、「過労死」や「過労自殺」について議論をしながら、なぜか、誰もが取り上げないことについて考えます。

歯止めがかからない職場のあり方こそ問題

 私が、「過労死」や「過労自殺」について問題視するべき、とかねがね思っているのは、その「前段階」です。たとえば、今回のケースでいえば、入社1年目でこれほどの量の残業をさせていることへの、同じ部署の社員からの意見などはなかったのか、ということです。

 もっといえば、職場で「まともな議論があるのか否か」、「市民感覚の良識が働いているのか、否か」です。それらの議論や良識がないがゆえに、歯止めやブレーキがかかることなく、問題が問題として放置されると思えてならないのです。

 いじめやパワハラ、セクハラ、退職強要、退職脅迫、あるいは、不当とも思える配置転換や人事評価などが大企業から中小企業にいたるまで多発しているのは、この歯止めがかからない職場のあり方に、大きな原因があるように思います。

 たとえば、人事評価に納得がいかないときに、上司らと話し合いすらできない職場が多数ではないでしょうか。上司の指示・命令は「絶対」とされ、そのほとんどに従わざるを得えないのではないでしょうか。それらの中には、明らかに問題があるものも少なくないでしょう。

 ところが、部下はそのことが堂々と言えないし、そんな場や機会すらないのです。亡くなったこの女性社員がツイッターでつぶやく内容は、20代前半の会社員のものとしてみると、私には理解できないものも少なからずありました。

 おそらく、職場で上司などにきちんと意見がいえない、あるいは、いえるような工夫や空気がないがゆえに、このようなつぶやきになっていたのではないか、と思います。

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最終更新:10/19(水) 9:47

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