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筋肉少女帯は、なぜカラオケで絶唱するのか

東洋経済オンライン 10/20(木) 6:00配信

 今年8月末、カラオケ店大手シダックスが大量閉店をしたことが話題をさらった。2015年の「カラオケ白書」によると、参加人口は4年連続で微増しており、決して「斜陽」といえる業界ではない。とはいえ大手が大量閉店を決めたことは、業界の先行きに不安を投げかけている。

【写真】 「筋肉少女帯」がカラオケボックスに登場?

 カラオケ業界に閉塞感が漂っているのは事実。そうした中で業界最大手の第一興商が新しいプロモーションを仕掛ける。これは、新しい客層をカラオケに集めるためのなかなかうまくできた仕掛けだ。

■サラリーマンにロックでストレス解消を

 その仕掛けとは、10月26日に発売される筋肉少女帯のニューシングル『人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)』。第一興商と徳間ジャパンコミュニケーションズが企画段階から協力しあって生まれた史上初、「カラオケのためのタイアップ曲」だ。

 史上初のタイアップが実現した素地には、この2社の関係がある。2001年に第一興商は徳間ジャパンを買収しており、100%子会社だ。人事交流もあり、2016年3月の異動では第一興商から和田康孝氏が社長として、下川一秀氏が常務として徳間ジャパンに派遣された。

 ここで登場する仕掛け人が第一興商・編成企画部の小倉博之チーフ。同氏は、これまでに「西部警察」や「大映ドラマ」とのコラボ企画を実現させてきた実績がある。「4月に下川常務に『カラオケのためのタイアップ曲を作りたい』と直訴した」(小倉氏)ことから、プロジェクトが動き出した。「タイアップの相手は誰でもいいわけではなく、『筋肉少女帯』に決めていました。新橋で飲むサラリーマンを見ていると、最近は元気が無いですよね?  カラオケでロックを歌ってストレスを吐き出してもらいたい。サラリーマンへの応援歌を作ってもらうしかない、と思ったんですよ」(小倉氏)。

筋肉少女帯をもっとメジャーなゾーンへ

 それに対して、徳間ジャパン側にも渡りに船の側面があったようだ。筋肉少女帯の担当で制作宣伝本部ディレクターの田中亮氏は語る。

 「小倉さんからのお題は“絶唱メタル”を作って欲しいというもの。筋肉少女帯は昨年アニメ『うしおととら』のオープニングテーマを歌ってアニメファン層へのアピールと浸透ができた。最近ではロックフェスに声がかかることも多く、従来のファンとは違う層へ筋肉少女帯というバンドが浸透してきている。さらに別のジャンルからの支持を拡大させるには、カラオケで歌ってもらえる楽曲はチャンスだと思いました」

 早速メンバーに企画を打ち明けようと思った田中氏だが、ボーカルの大槻ケンヂがのどのポリープ手術を控えていた微妙な時期でもあった。

 「大槻ケンヂも大人の事情を理解してくれて、すぐに乗り気になってくれた。曲のタイトルにある箱男とはカラオケボックスで歌うサラリーマンの姿であり、安部公房の同名の小説へのオマージュ。筋肉少女帯の歌詞の持ち味である“不条理”は、サラリーマン社会の不条理とも相通じるものがあり、見事にはまりました」(田中氏)

■プロモーションビデオは作り直し

 アーティストサイドが乗り気になったことで、企画は一気に進展。楽曲が完成、プロモーションビデオの第一弾が出来上がるのも早かった。

 しかし、最初のプロモビデオに物足りなさを感じた。

 「大槻ケンヂがサラリーマンに扮してカラオケボックスで絶唱する、という内容だったが、どうもこれだけでは物足りない。そこで他のメンバーも入れてギターソロをフィーチャーするなどの工夫をしました。曲のタイトル画面や歌詞のテロップも実際にDAMで使われているものを加え、CDジャケットも実際のカラオケボックスのモニター画面を撮影し、そのまま使っているのも前代未聞です」(田中氏)

 こうしてカラオケ背景映像風に徹底的にこだわったプロモビデオは「見てよし、歌ってよし」という出来栄えになった。第一興商としても、カラオケDAMそのものとタイアップする企画は初の試み。関係部署とのすり合わせには苦労があったようだ。

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最終更新:10/20(木) 16:10

東洋経済オンライン

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