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JR東海の攻勢をかわした「名鉄」の復活劇

東洋経済オンライン 10/20(木) 6:00配信

 名古屋鉄道(名鉄)は2016年3月期決算で、営業利益が24年ぶりとなる過去最高益448億円を記録した。5円配当にいたっては、46年ぶりという好実績だ。不採算部門の整理と、利益部門へのテコ入れという経営の王道を進み、みごとにその成果を結実させた復活劇をまとめた。

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■利益の大黒柱は鉄道事業

 2016年3月期決算における名鉄の事業別営業利益を見ると、全利益のほぼ半分にあたる220億円余りを交通事業が稼ぎ出している。その交通事業の内訳をみると、鉄軌道事業が153億円と、約7割を占める。全営業利益に占める鉄軌道事業の営業利益は34.1%と、3分の1以上を稼ぎ出していることになる。名鉄が、大手鉄道事業者である証とも言えよう。

 24年ぶりに営業最高益を更新した名鉄だが、24年前といえば1992年3月期だ。バブル期最後の決算で、名鉄に限らず日本の産業界は翌年以降、“失われた20年”に突入していく。その過去の栄光に対して、四半世紀をかけてようやく復活した格好だ。

 その間の鉄道事業に関する主な動きをみていこう。

 1987年4月1日に、国鉄が分割民営化された。このとき、名鉄と競合する路線をもつJR東海が誕生した。JR東海が運営することになった東海道本線のうち、岐阜~尾張一宮~名古屋~岡崎~豊橋は、名鉄名古屋本線とほぼ併走している。

 特に、岐阜~名古屋間はほとんど併走しているうえ、紆余曲折のうえ開通した名鉄名古屋本線に急曲線が多いのに対して、東海道本線は線形が良い。さらに、名鉄岐阜駅(当時は新岐阜駅)の構内手前でJR東海道本線と立体交差するのだが、ここはわずかな区間ながら単線となっており、ダイヤ設定の制約を受ける。

バブル崩壊とJR東海の猛攻勢

 一方の豊橋口では、名鉄名古屋本線が上り線、JR東海の飯田線が下り線を担当することで複線を構成しているため、やはりダイヤの制約を受ける。名鉄が豊橋に延伸する際の豊川鉄道(飯田線の前身)との駆け引きと、太平洋戦争による豊川鉄道の国有化が原因なのだが、並行する東海道本線は複線を有している。

 つまり、名鉄にとって稼ぎ頭の名古屋本線は、両端ともにJR東海によって制限を受けてしまっているのだ。さらに、国鉄末期に導入された特定区間運賃制度により、国鉄は平行する私鉄と同じ運賃を適用する区間ができた。名鉄沿線では、名古屋本線沿いの主要駅間にこぞってこの制度が適用されていた。例えば、名古屋~岐阜間は、名鉄・JR東海ともに大人普通運賃は片道430円だった。

 それでも、JR東海発足時の東海道本線は、国鉄時代のダイヤを引き継いだため朝7時台でも岐阜発の上り列車はすべて各駅停車で1時間7本、所要29分であった。当時、名鉄も同じく7本だったが、うち1本は座席指定席特急で所要28分、急行では所要38分であるものの、ほかに新一宮発の準急が2本あり、運行頻度と名古屋市営地下鉄東山線との乗換の便利さで、優位に立っていた。

■競合しない路線に重点シフトへ

 しかし、JR東海は1989年に新型車311系を投入、その後さらに313系を大量投入し、いまでは岐阜発の午前7時台は1時間に15本、うち1本が定員制ホームライナーとなっている。所要時間も新快速で最速22分、運賃470円と、名鉄の1時間8本、最速29分、運賃550円に比べて優位に立っている。尾張一宮~名古屋間にいたってはさらに顕著で、JRが所要時間12分で300円なのに対して、名鉄は17分370円と、大きく差がついている。

 この結果、バブル崩壊に続くJR東海による攻勢で、名鉄の鉄道事業は大ピンチを迎えることとなった。

 東海道新幹線で稼ぎ出した利益を、新幹線投資の合間をみて在来線投資に振り向けるJR東海に対して、名鉄はその資金力で対抗することは難しい。なにせJR東海は、JRグループ旅客6社で唯一、国鉄時代の車両を一掃し、2016年度からはJRになってから新製した車両だけにしてしまったほどだ(JR東海発足の5カ月前に新製した211系電車8両を除く)。

 そこで、21世紀になってから名鉄は、従来の名古屋本線で稼いでいくビジネスモデルを転換し、JR東海と競合しない常滑線と犬山線で稼ぐ形に持っていく。

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最終更新:10/20(木) 6:10

東洋経済オンライン

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