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吉田沙保里ロングインタビュー“その強さの先にあるもの“

VOGUE JAPAN 2016/11/28(月) 18:29配信

「人生は、勝つことだけじゃない」。吉田沙保里が、この夏のオリンピックを振り返る。聞き手を務めたのは、タレント、エッセイストとして活躍する小島慶子。次々飛び出す言葉のキャッチボールの中から、その孤高の強さの核に迫った。

女性として、競技者として。34歳という年齢に向き合う今。

リオオリンピック、あの決勝の、あの瞬間。

──リオオリンピック、女子レスリング53kg級の決勝。あの銀メダルが決まった時、マットにつっぷしたあの吉田さんの姿をカメラが真上から捉えていました。吉田さんの記憶の中には、あの瞬間はどんなシーンとして残っているのでしょうか。

吉田沙保里(以下 吉田):あの時はただ「ああ、負けた……」と。4対1のまま追いつけず、最後はタックルに入ったけど、試合終了のブザーが鳴って。そのまま「ああ……」という感じだったので。

──中継を拝見して、あらためて、アスリートの方ってとても過酷だなと思いました。私も人に見られる仕事をしていますけれども、大抵は見られることを前提にメイクをしていただき、照明を当てていただく。でもアスリートの方は、360度本当に……。

吉田:ありのまま(笑)。

──見られることを意識なんてしていられないところを、ずーっと撮られ続けて、それを全世界の人が見て。しかもそこで勝敗がつく。ちょっと他にない厳しい見られ方だなあと思うんですよね。

吉田:そうですね。でもそれが良さでもあると思うんですよね。なかなかそこまでは撮っていただくこともないじゃないですか。それに、競技をそんな風に見ていた抱いているからこそ、素の私とのギャップがあったりとか。競技中ではない私を見て「普段はこんな感じだったんですね」とも言っていただけるし。

──そういうものですか?

吉田:人によって「見られること」の始まりがどんなものだったかで、それに対する考え方や感じ方も変わると思うんですけれども、私は小さい頃からずっとそうやってきて、それが当たり前の世界だったので。

「銀メダルで、ごめんなさい」の理由。

──そうだとしても、あれだけの大きな舞台で、しかも、金メダルではなかったという場面でのインタビューって……どんなに大変だろうって、思いながら見ていました。あの時の吉田さんのインタビューは、悔しさも動揺も伝わってきたし、なんて素直な人だろうと。本当に率直な「ごめんなさい」とか「まさか銀メダルとは思いませんでした」とか……あの場面で、素直にあのような言葉を出せる吉田さんってすごいな、素敵だなと思ったんですよね。

吉田:いろいろな人と約束していました。金メダルを見せる、絶対に頑張ってくるからね、と。その約束の相手は一人や二人ではなく……へたしたら日本の国民の皆様が、吉田は間違いなく4連覇をするだろう、と期待していたかもしれない。今回は日本選手団の主将としてリオに行かせていただいていたということもありましたし。だから金メダルが取れなかった時、「ああ、取れなくてごめんなさい」って。本当にそのままの気持ちだったんです。ああいう時のインタビューって、終わって、本当にすぐなんですよ。試合後、マットから下りて帰るところにインタビュアーの方が待っているので。だから、負けた時の、ありのままの気持ちが出たという感じですね。

──あの後、日本では「吉田さん、謝らないで」という意見もあったんですけれど、私は、その時その人が謝りたいって思ったんなら、そうするのがいいと思ったし、泣きたいなら遠慮なく泣いてほしいと思った。でも、国を背負ったアスリートって、それに加えて、立場とか、その立場に対する期待もあるのですよね。

吉田:やはり私自身、4連覇したいという強い気持ちがありましたので、それができなくて悔しいという思いもありましたし、皆さんの期待に応えられず、4連覇を見せられなくてごめんなさい、という思いもありましたし……。でも「謝らなくてもいいですよ」という優しい言葉を国民の皆さんからいただけたことは素直にうれしく思いました。皆さんが「よくやった」と褒めてくださっている、負けても見捨てずに私を応援してくださっているんだ、という気持ちになれましたね。

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最終更新:2016/12/2(金) 12:57

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