ここから本文です

光熱費、電車賃、預金......ぼったくりイギリスの実態 - コリン・ジョイス Edge of Europe

ニューズウィーク日本版 2016/12/8(木) 16:30配信

<なぜイギリス人はいつも怒っているのか? それはイギリスで生活していると、異常なほど高額の「ぼったくり」に、しょっちゅう遭遇するからだ>(写真:イギリス生活には不満が一杯)

 もしもイギリスに住んでいるとしたら、必ずやこの言葉を頻繁に聞くことになるだろう。「rip off Britain(ぼったくりイギリス)」。

 全体的にみると、イギリスはかなり安く生活できる国といえるかもしれない。僕のイギリスでの生活費は、日本にいたときの生活費より「安い」――為替相場がこう劇的に動くとあっては、その比較も容易じゃないけれど。

 それでも僕たちは、しょっちゅう「ぼったくり」にぶち当たる。値段がばかみたいに高いのだ。それは①同レベルくらいの他の国と比較して異常に高い場合もあるし、②以前と比べてだいぶ値上がりしているという場合もあるし、③「市場原理」から考えて高すぎるという場合もある(つまり、市場競争など機能していないらしい)。

 その最たる例がガス料金と電気料金だ。この2つはここ数年で、インフレ率(5~8%)を上回る値上がりを見せている。これは「石油価格の高騰」で正当化されてきた典型例だ。石油価格が暴落すると、光熱費も少しだけ値下がりした。それも、あくまで段階的に。

【参考記事】トランプ勝利で実感するイギリス君主制の良さ

 ガス、電気会社は一般的に、石油の一部を数カ月前、時には数年にも前に固定した価格で仕入れるため、たとえ石油価格が下落しても即座に電気料金、ガス料金に反映させることはできない、というのが彼らの説明だ。

 さて、石油価格が1バレル=50ドルを下回るほど低迷するようになってから約2年が過ぎた......そして光熱費はなぜか、再び値上がりを始めた。(イギリスでは電気の多くが石油を燃料にして作られているし、天然ガスの料金もかなり石油価格に左右される)

もともと高いのにさらに値上げ

 イギリスでは電車運賃もばかみたいに高い。外国の友達が訪ねて来るときにはこのことを前もって警告しておくけれど、彼らは全然信じようとしない。高くてもせいぜい、普通より数ドルとか数百円高いくらいだろうと考える。ところが実際は、考えている金額の2倍はする(そして彼らはびっくりして僕に愚痴る)。

 ギリシャまで飛行機で飛ぶより、イギリスで空港まで電車で行くほうが高くつく、というのはイギリス人がよく言う話だ。これはジョークじゃない――実際にそうなんだから。



 ある学生が英シェフィールド(そこの学校に通っている)からドイツのベルリンに飛行機で旅行し、それから英エセックス(住んでいる場所)に飛行機で戻ったら、航空運賃は普段の通学にかかる電車賃より安かったという。一応言っておくと、シェフィールドとエセックスはイギリスの端と端に位置しているわけではない。

 さらに来年1月、電車運賃が平均2.3%値上がりすることが発表されている(値上げ幅を決定する当局がある)。そんなにたいした値上げじゃないと思うかもしれないが、元々高い場合、2.3%は大きい。

 たとえばエセックス州コルチェスターからシェフィールドまでにかかる101ポンド(約1万4600円)は、さらに2ポンド値上がりすることになる。これは日本でいえば大宮から名古屋くらいの運行距離。イギリスでこの距離を移動すると日本より2時間は長くかかり(流線型の新幹線でもないし)、それでいて価格は20%も高い(現在のポンド安の状況でも)。

恩恵を手にするのは銀行や大企業

 次は、預金金利だ。イングランド銀行(中央銀行)はブレグジット(イギリスのEU離脱)後に貸出基準金利を0.25%下げた。だが多くの銀行は貯蓄口座の金利を0.5~1.5%引き下げている。僕の「一番お得な」はずだった口座の金利も1月には4%から2%に落ちてしまう。これは彼らのいつものやり方だ。銀行は預金者の金利を攻撃的なまでに下げて「取れるところからならどこからでも取る」。

【参考記事】タブーだった「嘘」という言葉をばらまき始めたイギリス人

 もう1つの例は、ISA(個人貯蓄口座)。預金の金利が非課税になる口座だ(通常なら20%を源泉課税される)。だからたとえば、預金で3%の利子が得られるとき、ISAでは丸ごと3%が手に入るが、普通預金口座では2.4%しか受け取れない。ISAのほうが明らかにお得だ。

 ところが銀行は、たとえば普通預金の金利が3%だとしたら、ISA口座では金利を2.5%、というふうに設定するようになった。それでもまだ普通預金口座よりは「得」だという触れ込みだ。そのおかげで、非課税の恩恵のほとんどを、消費者ではなく銀行が手に入れた。

 加えてあるときから、銀行はさらなる手段に出た。ISAの金利を自社の普通預金口座よりも低く設定するようになった。そうしてもなお、総合的・長期的に見ればISA口座のほうが普通預金口座よりはギリギリ得になるからだ。

 そんなわけで、今となっては将来的な(理論の上では得られるであろう)利益を夢見て、低い金利のISAに泣く泣く甘んじている人々がいる。でなければ、その他の人々はそれすら理解せず、「非課税口座」なんだから、たとえインフレ率よりも低い金利でもお得に違いない、と信じ込んでISAを利用しているようだ。



 さて、最後の1つだ(本当にこれで最後)。イギリスでインターネットサービスのプロバイダーと契約するとき、通常はインターネット料金は1カ月数ポンドだと宣伝されている(僕の場合は1カ月1ポンドだった)。この金額には、必要不可欠な「回線レンタル代」が含まれていない。それを入れれば大抵1カ月に20ポンド近くなる。

 僕が2012年に初めてイギリスでインターネットを契約したときは、これは1カ月10ポンドだった。その後は年々8~20%の値上げが続いた。

 なんともおかしなシステムだ。プロバイダーは、かつての国営企業の生き残りみたいな電話会社から卸売価格で回線使用料を「買って」いるのだから。大手プロバイダー数社が年間60ポンドもの値上げに踏み切ったのとまさに同じ時期に、実はこの卸売価格は下がり続けていたというニュースを、ちょうど最近、僕は耳にした。

 こんなことをしつこく並べ立てて申しわけない。でも、僕やほかのイギリス人がどうしていつも怒っているのか、ザッと知ってもらいたかったのだ。くたばれ、ぼったくり!

コリン・ジョイス

最終更新:2016/12/8(木) 16:30

ニューズウィーク日本版

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ニューズウィーク日本版

CCCメディアハウス

2017-2・28号
2/21発売

460円(税込)

他の日本のメディアにはない深い追求、
グローバルな視点。
「知とライフスタイル」のナビゲート雑誌。