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ブラックバイト問題の語られない意外な真実

東洋経済オンライン 1/5(木) 6:00配信

若者を使い潰す「ブラックバイト」は、今、そこにある問題だ。私は大学教員として学生がアルバイトに振り回されていることが気になっている。もちろん、経済的に豊かではなく、奨学金やアルバイトに頼らなければ学生生活が成立しない学生が一定数存在する。「ブラックバイト」はそんな学生につけこみ、強引なシフト編成、サービス残業の強要などを行っている。
これまで「ブラックバイト」に苦しむ学生の様子は何度もメディアで取り上げられてきたが、アルバイトを募集し、雇う側の論理が紹介されることはまれだった。リクルートグループで『FromA』『タウンワーク』『とらばーゆ』『ガテン』など数々の求人メディア編集長を歴任してきたツナグ・ソリューションズの取締役、平賀充記氏のインタビューをお届けする。平賀氏はツナグ働き方研究所の所長でもあり、2016年10月に著書『非正規って言うな!』(クロスメディア・パブリッシング)をリリースした。日本のアルバイトの現場で何が起きているのか? アルバイトに希望はあるのか? 

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■バイト先の社員がむしろブラック労働に苦しんでいる

 常見陽平(以下、常見):ご著書の『非正規って言うな!』は大変貴重な本だと思います。アルバイトを30年近くに渡って追い続けてきた平賀さんでしか書けない本です。今日はアルバイトの現場で起きていることを教えてください。

 平賀:2016年は電通の自死事件が明るみに出ました。アルバイトの現場でも長時間労働や、まさにブラックバイトと言われるような状況が起こっているのかと思い、アンケート調査を行いました。

アルバイトはそんなに過酷ではない?

 ざっくり言うとアルバイトをしている人は大体月間で98時間くらい働きたいと言っています。時給1000円だとして月間9万~10万円。そのくらいが理想のようです。で、実際働いているのが91時間なんですよ。希望よりたくさん働かされているかと思いきや、全体でみるとほぼトントン、ないしは、やや少なめくらいの仕事量。これは意外でした。

 また、どのくらい残業をしているのか、「もっとシフトに入って」と言われるのか、という質問では、約半数が残業も超過シフトもない、あっても月に2~3回までという回答が7割を占めました。定量的にみると、アルバイターの労働時間はそんなに過酷ではないという印象です。

 「働きすぎだと思うか?」という問いについても、Yesと答えている人は29%にすぎません。アルバイターは全体的には、そんなにブラックではないんですよね。

 ただ、過重労働によって「辞めたいと思い、言ったけれども辞めさせてもらえなかった」という人も、事実3%はいるんですね。そして、「辞めたいと言っても辞めさせてもらえなさそう」と言っている人も14%くらいいるんです。全体的にはブラックではないけど、局地的にブラックな状況がある、これがリアルのようです。

 昨日もマクドナルドでアルバイトしている男の子と話をしていたら、シフトは今、かっちりと決められていて、8時間以上働くのは絶対ダメなんだと言うのです。例えば、3時間のシフトで入った時に、あと2時間くらい残ってほしいということは結構あるようです。しかし、最長は8時間というように決められていると。やはりアルバイトはそんなにブラックにはなってないんです。

 一方で、先日、ある飲食店の店長さんにインタビューをしたのですが、この人は「9時に出勤そして23時まで働いています」と言うのです。そして「やっと最近週に1回は休めるようになりました」と。ざっと計算すると、200時間くらい残業をしているんですね。

■「採用氷河期」のただ中で

 常見:そういうことなんですね。9時から23時まで、しかもデスクワークではなくずっと立ちっぱなしで、お客さんやスタッフに気を遣いながら……。

 平賀:そうですね。負のしわ寄せが店長さんや数少ない社員さんにいっている感じがするんですよね。

 常見:今、ブラックバイトが社会問題化しています。一方、これだけブラックバイトが騒がれると、お店の側もケアをする、と。求人状況を見ると、今は雇用形態を問わず売り手市場です。しかも、若年層は減っていく。「採用氷河期」です。アルバイター争奪戦のなか、労働環境を改善せざるを得ないはずなんです。

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最終更新:1/5(木) 13:35

東洋経済オンライン