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一生モノの高級ダウン「モンクレール」の正体

東洋経済オンライン 1/7(土) 6:00配信

 東京・銀座2丁目の高級ブランドが立ち並ぶ一角に、重厚な大理石をあしらった路面店がある。高級感が漂う店内に一歩足を踏み入れると、照明の下に数々のダウンがそろえられている。

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 2015年10月にオープンした「モンクレール 銀座」。2011年開業の青山店に続く日本で2店目の旗艦店だ。店内は30~40代と見られる客が中心で、男性の一人客ほか、夫婦やカップルで商品を吟味する姿も目立つ。銀座という土地柄、訪日外国人客も多い。

 フランス産など最高級グースダウンを使用した同社のダウンは1着あたり20万円を下らない。それでも日本で支持を広げている理由は何だろうか。

■雄鶏のロゴがトレードマーク

 フランス発祥のモンクレールは、登山などにも利用される本格的なアウトドアウェアのブランドだ。1980年以降、タウンユースを目的としたダウンジャケットの発売を開始。雄鶏のロゴがあしらわれたダウンは一般消費者に徐々に浸透していった。日本においては1990年代にセレクトショップなどで取り扱いが始まっている。

 同社を率いるレモ・ルッフィーニ氏は1998年にクリエイティブディレクターに就任。2003年には経営権を取得し、現在まで会長職を兼任している。会長就任以降、PE(投資)ファンドの力も借り積極的な海外展開を推進。2013年には投資ファンドのカーライルグループによる株式売却を契機に、イタリア証券市場に上場した。

 現在は世界70カ国、200以上の直営店を展開する。そのうちアジアは販売額の3割以上を占める。東京だけでなく、韓国のソウルや中国の北京にも旗艦店をオープン。2015年、日本のほか中国と韓国を含めたアジア地域は前年同期比20%超増と高い伸びを示した。ルッフィーニ会長は「日本は重要な市場であり、銀座の旗艦店のオープンがブランドの進化を確実にした」と語る。

企業としての実態は?

 日本での直営店展開は8年前に遡る。2009年に高級ブランドを手掛ける輸入商社・八木通商との合弁会社「モンクレール ジャパン」を設立。それまではセレクトショップなどへの卸売りが中心だったが、合弁設立をきっかけに直営店の出店を本格化させた。現在は青山や銀座の旗艦店だけではなく、百貨店を中心に全国27店舗で展開する。そのうちのおよそ半数の12店が東京都内の店舗だ。「特に東京地域でのブランド認知は進んでいる。既存の店舗ネットワークを改善しさらに認知を高めたい」(ルッフィーニ会長)。

 モンクレールは高収益企業でもある。2015年1月~12月の同社の業績は、売上高が約8億8040万ユーロ(約1057億円、前年同期比26%増)、EBITDA(税引き前利益に利払い費、償却費を足したもの)は約3億ユーロ(約360億円、同28.8%増)だった。成長著しいアジア地域だけでなく、全世界で直営店による店舗ネットワークの拡大を進めている。

 特筆すべきは2012年に69.7%だった粗利益率が74.4%まで向上していることだ。粗利益率は売上高から原料や製造委託費など直接原価を引いたもの。アパレル企業の粗利益率は40~60%が一般的で、70%を超えるのは異例だ。粗利益率の高さは、それだけ商品の付加価値を消費者が認めている証でもある。

■直営店比率が約7割に拡大

 粗利益率の向上と平行して、高まっているのが直営店比率だ。2015年には直営店での売り上げ比率が約7割に達した。一般的に卸売りだけでなく販売まで手がけたほうが、リスクは高まるが利益率は改善する。自ら直営店を運営すればブランドイメージをコントロールしやすいというメリットもある。直営店戦略はモンクレールを高級ブランドとして押し上げた一つの要因といえそうだ。

 ルッフィーニ会長は「私たちは決して財務データをみてビジネスの意思決定をしていない。適切な価格体系はあらゆる高級ブランドにとって重要だ」と述べる。クリエイターである同氏が長く経営の中枢にいることが、ブレのない戦略の最大の要因といえるかもしれない。需要拡大の進む日本、アジア地域でさらに新規客を取り込めるかどうか。ルッフィーニ会長の手腕に掛かっている。

菊地 悠人

最終更新:1/12(木) 12:55

東洋経済オンライン