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乙武洋匡氏、政治に“白旗宣言”

週刊SPA! 1/10(火) 9:10配信

「乙武洋匡、40歳、無職」。最近の乙武洋匡氏が使っている肩書である。もしも、あの騒動がなければ、その肩書は今頃「参議院議員」になっていたかもしれない。

 ’15年の末頃から、乙武氏が参院選に出馬するという報道が出始めた。当初、我々は参院選出馬はないと踏んでいた。というのも、’14年に新宿区長選に出馬するという噂が流れたときも「人生、何が起きるかわからないので将来的に政治家になるという選択肢を完全に否定はしませんが、現時点ではまったく考えていません」ときっぱりと否定していたからだ。さらに乙武氏は作家、スポーツライター、教師、東京都教育委員など数々の仕事を経験するなど、常に自分の興味のある仕事を多方面に複数抱えるタイプ。政治家のように縛り付けられる仕事は本人の志向するところではないだろう、とも考えていた。

 だが、’15年末の取材で「参院選には出るんですか?」と聞いたとき、乙武氏はこれまでと同じように「将来、政治家になる可能性はゼロではありませんが、わかりません」と答えていたが、「あ、これは出馬を考えているな」という空気を感じた。明らかにこれまでとは違う、政治のほうを向いている顔をしていたのである。

 乙武氏のマネジャー氏にも「出るかどうかは答えられないと思いますが、出馬表明があった瞬間から勝手に張り付きますんで」と勝手に番記者宣言し、これは’16年の夏は忙しくなるぞ、と我々も参院選に向けてテンションを上げていたのであった。

 ところが、ご存じの通り、’16年の春に『週刊新潮』による不倫報道が出て、乙武氏は活動自粛生活に入ることになる。彼と我々が最後に会ったのは、出馬表明の場になるという憶測が立っていた乙武氏の40歳誕生パーティの場。いつも笑顔でほがらかな彼が、この日ばかりは憔悴しきった表情で、参加者たちに「ご迷惑をおかけしました」と頭を下げ続けていた。「やめてくださいよ、こっちは迷惑かけられてないから」と冗談を言ってみたものの、彼の神妙な顔は変わることがなかった。

 それから8か月。紆余曲折はあったが乙武氏がメディアに復帰した。我々も雑誌としては一番最初に取材をすることに成功し、撮影場所で彼を待ち構えていた。

「お久しぶりです。お騒がせしました」

 にこやかに、いつもの笑顔で乙武氏が入ってきた。ほとんど外出していなかったためか、以前より肌の色が白く、若干ふくよかになった以外、表面上はすっかり以前の乙武氏に戻っているようだ。そして、取材はスタートした。

 なごやかに談笑しつつ、「活動自粛前、実際のところは参院選に対してどう動いていたのか?」と尋ねたところ、「ちょっと待ってください」と乙武氏は断って、マネジャー氏に声をかけた。

「これ、いずれどこかで話すならずっと応援してくださったSPA!さんで話すのがいいと思うんだけど、今後も言わないの? ここでは黙っていたのに、別のところで話しているなんてことはイヤだから」

 するとマネジャー氏は熟慮の結果、「多少、オブラートにくるんでもらえれば」とOKを出した。それを受け、乙武氏は再び語りだす。

「誤解があるかもしれないですけど、そもそも政治家って、私にとってはやりたくない職業なんです。批判しかされない、カネはかかる、家族にも窮屈な思いをさせるということを考えれば、こんな割に合わない職業はないですよ。ただ私には、自分自身が少数の側に生まれたということもあって、どんな境遇の人でも平等に選択肢が与えられる社会を実現していきたいという思いがあります。そういう社会をできることなら政治という道を通らずに実現できたら、それが私にとってはベストでした」

 そのためにさまざまな手段やメディアを通じ、硬軟織り交ぜたメッセージを発信してきた。だが、それでも社会を変えることが難しければ、政治の世界に行く腹をくくるべきときがいずれくるかもしれない、と20代前半から感じていたという。だが、具体的に政治の道を考え出したのは’14年頃。そこには年齢の問題もあった。

「結局、何ひとつ変えられないじゃん、としんどくなってきたんです。そして40の足音が近づいてきて、『締め切りがここなら、そろそろ原稿書き始めないと間に合わないな』みたいな、そういう思いが強くなっていたんですよね」

 だが、実際には活動自粛に入り出馬することはなかった。もしも選挙運動中に不倫スキャンダルが暴露されていたらどうしていたかを尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「いや、本当に出馬するとなったら、自分から明らかにするつもりでした。絶対に暴露されると思っていたので。だから『週刊新潮』に直撃されたときも、驚いたというよりは、『ついに来たか』という感じで。もちろん、そんなことまで考えていたなら身奇麗にしておけという話なんですけどね。それについては認識が甘かったとしか言いようがない。ここはもう、素直に反省してます」

「まあ、もう二度と出馬依頼なんて来ないでしょうけどね」と笑う乙武氏。一連の騒動を振り返り「正直なことを言うと、トータルではよかったと思っています」と語る。

「もしも私が今日死んでここで終わるなら、この1年はマイナスでしかないですけど、長い人生、まだ残り半分ぐらいあるとするならば、そのど真ん中でこういう経験をさせていただいたのは、すごく今後に生きてくると思っています。もうひとつ、これは散々『SPA!』の連載でも語らせていただいたことですが、これでようやく“鉄仮面”を外せたかな、と。もう“いい子ちゃんの乙武洋匡”なんて誰も期待しないでしょうから(笑)」

 あたかも障害者代表のように思われ、まるで聖人君子のような振る舞いを期待されてきた乙武氏。だが、もちろんバカ話もするし、(もうしないだろうが)悪い遊びだってしてきた。そんな素の部分の乙武氏を紹介すべく、本誌の連載では女装にチャレンジしたり、趣味のスポーツ観戦に行ってみたり、海外に行ったりと乙武氏のさまざまな部分を紹介してきたのだ。

 今回、もう十分すぎるほど自らをさらけ出した乙武氏。だが、「どんな境遇の人でも平等に選択肢が与えられる社会」の実現に向ける思いは変わらない。今後、どのような形で乙武氏がそのテーマに向かい合っていくのか、注目し続けたい。

取材・文/織田曜一郎(週刊SPA!)・小山田裕哉 撮影/植松千波

※現在発売中の『週刊SPA!』1/10発売号の「エッジな人々」では、乙武洋匡氏が「40歳、無職の『新年の誓い』」を余すことなく語っている。この記事で語られたことはごくごく一部! ぜひ、ご確認を!!

日刊SPA!

最終更新:1/10(火) 16:49

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