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パナソニック、EV用電池「大バクチ」の勝算

東洋経済オンライン 1/12(木) 5:00配信

 「ビジョナリストはこうも楽観的なのかと驚かされる」――。

 パナソニックの津賀一宏社長は2016年末、「一目置く経営者は誰か」という記者の質問に対し、EV(電気自動車)ベンチャー・テスラモーターズのイーロン・マスクCEOを挙げてこう評した。

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 パナソニックとテスラの付き合いは、EV用電池の開発で協業を始めた2009年にさかのぼるが、その関係は今年さらに深化することになる。

 年始早々の1月4日、津賀社長とマスクCEOは米ネバダ州にあるテスラの巨大電池工場、ギガファクトリーの開所式に揃って出席した。同工場では、パナソニックがテスラのEV「モデル3」向け電池セルとテスラの蓄電システム向け電池セルを生産。テスラはそれらを用いて電池モジュールの生産を行う。ギガファクトリーへの投資額は公表されていないが、テスラ・パナソニック・ネバダ州による投資総額は5000億円にのぼるといわれている(現在の工事進捗率は3割程度、段階的に増設予定)。うちパナソニックは1500億~1600億円程度を拠出するものと見られる。設備投資としては、過去に巨額投資の末に撤退を余儀なくされたプラズマディスプレイ関連の約6000億円に次ぐ規模となる。

■成長戦略の柱は車載事業

 開所式でマスクCEOはギガファクトリーについて「ハムスターでいうと500億匹入る大変大きな土地」とジョークを飛ばしつつ、「EVを長期にわたり安く提供するためにこの工場が必要」とその重要性を強調した。

 パナソニックは成長戦略の柱に車載事業などBtoB事業を据えており、中でも車載用電池事業は今後EV市場の拡大に伴い成長が見込まれる重要分野としている。2015年度の車載電池事業の売上高は1800億円だが、2018年度には4000億円まで拡大させる計画だ。計画達成はテスラのEVが今後どれだけ売れるかにかかっている。

テスラの販売台数計画は?

 テスラのEVは、洗練されたデザインと一回の充電で航続可能な距離が長いことなどが人気でEV市場シェアの22%を握る(2015年、EV Sales調べ)。2017年半ばから生産が予定されている「モデル3」は、航続距離が344キロメートルと現在主力の「モデルS」に遜色ない性能ながら価格を3万5000ドルに設定したことで注文が殺到(「モデルS」の価格は5万6200ドル)。予約開始から約3週間で40万台を受注した。

 今後は生産台数を現在の年間5万台から2018年までに50万台に伸ばす計画だ。実現すれば2015年の全メーカーのEV販売台数22万台の2倍以上に膨らむ。テスラの販売が伸びればパナソニックの電池供給も比例して増え、工場稼働率が上がれば投資回収も可能という算段だ。

 勝ち馬に乗った格好のパナソニックだが、必ずしも前途洋々というわけではない。これから世界の電池大手との熾烈な戦いが待ち構えているからだ。

■モバイル用では完敗、車載用はリベンジマッチ

 2000年代前半まで2次電池メーカーの主要顧客はパソコンメーカーだったが、その後スマートフォンメーカーが取って代わり、そのスマホも今や成長が鈍化。電池メーカーは次なる有望顧客として電気自動車メーカーに照準を合わせており、EV向け電池の開発競争は激しさを増している。

 リチウムイオン電池市場では、シェア1位のサムスンSDI(韓国)、2位パナソニック、3位LG化学(韓国)の3強が世界シェアの6割を占める。だが各社ともに、ノートパソコン向け需要の縮小と車載電池開発の先行投資がかさみ、2015年度の電池事業の業績は、サムスンSDIが赤字、パナソニック、LG化学も収支均衡圏と惨憺たる状況だ。

 また、車載向けに投資を割く余力のない電池メーカーは、ソニーが村田製作所に電池事業を譲渡したように撤退を余儀なくされている。EV「リーフ」を擁する日産自動車も傘下の車載電池子会社を手放して車載電池を外部調達に切り替える方針だ。

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最終更新:1/16(月) 12:10

東洋経済オンライン